理系人間が解釈する般若心経

似ているが違う事

 「感情をどうコントロールすべきか?」で「ポジティブな感情」と「ネガティブな感情」について述べてきたが、人間の行動・性格において表面的には似ているが、内容は違うという事がいくつかある。
 ここでは、その似ている事の内容がどう違うのかについて述べていく。

「お人好し」と「献身的な人」の違い
 自分を犠牲にして相手のためにした行為が、何でも「世のため人のため」になるとは限らない。
 「お人好し」は人から頼まれたら、それが「世のため人のため」にならないことでも、嫌と言えず、言われるがままに行動してしまう人のことである。自分が「良い人」と思われたい感情が根底にある。
 しかし、自分のことをかえりみず、本当に困っている人に手を貸したり、恵まれない人に寄付をするのは「お人好し」とは言わない。それは「献身的な人」である。「献身的な人」は自分の意思をしっかり持っていて能動的に行動する。
 「お人好し」は、悪意のある人間が自分の利益のために人を利用するような行為を助長し、その人間をダメにする。さらにその行為により他の犠牲者を生む可能性すらある。
 「お人好し」はネガティブで「献身的な人」はポジティブである。


「我慢」と「辛抱」の違い
 「我慢」は例えば、仕事やつきあいなどの中で、自分がしたくないことや嫌なことをこらえることであり、受動的なことである。
 これに対して「辛抱」は、自分が「世のため人のため」に自ら志したものを実現するための努力に伴うつらさを言い表わしたものである。
 人から押し付けられたものであれば苦労であるが、自分の立場が替わって、自分が先頭に立って困難を克服しなければならなくなると苦労とは思わなくなる。
 自分が生きていくためには、収入を得るための我慢も必要であるが、過度のストレスに到る我慢はよくない。
 「我慢」はネガティブで「辛抱」はポジティブである。


●「先延ばしにする事」と「時機を待つ事」の違い
 どちらもすぐに実行しないということでは同じであるが
 「先延ばしにする事」はやるべき事があるのに気が進まず、現実逃避している状態である。
 やらないと周囲が許さない場合には、場当たり的に「検討中です」などと言って時間を稼いで周囲が忘れるのを待つ。(忘れてしまう周囲にも問題はあるが・・・)
 「時機を待つ事」はある一定の条件が整えばいつでも実行できるように準備をしておく事である。例えば便利なサービスを考案したけれど、サービスを提供するインフラが整うまで、その内容をさらに見直して準備するようなケースである。
 「先延ばしにする事」はネガティブで「時機を待つ事」はポジティブである。


「自分を卑下すること」と「謙虚なこと」の違い
 「自分を卑下する」というのは、「どうせ自分なんか・・・」というネガティブな考え方である。これでは向上にはつながらない。
 これに対して「謙虚なこと」というのは・・・。
 人がやってる仕事は遅く感じるし、人の意見はイマイチのように感じる。しかし、自分がいざやってみると、もっと仕事は遅くて、まともな意見も言えない。そういう客観的な目で自分を捉えた時と、自分の主観との差を埋めるために、自分の能力を主観より何割かを差し引いて考える事が「謙虚」の意味ではないかと考える。客観的に自分を見るのはポジティブである。
 「自分を卑下する」はネガティブで「謙虚なこと」はポジティブである。


「怒る」と「叱る」の違い
 「怒る」のは感情的で、怒りを向けた相手にも怒りが残る。これは自分本位。
 「叱る」は相手のことを考えて叱ること。できればすぐに叱らず、相手が冷静になっている時に相手が受け入れやすいような言葉を使って叱るべき。そうすれば相手のためになるし、一時の感情でぶつかっているのではないと相手も理解してくれる。
 「怒る」はネガティブで「叱る」はポジティブである。


「ほったらかし」と「干渉し過ぎない」の違い
 自分の子供や部下などが絶対に失敗をしないようにといちいちうるさく言うのは過干渉である。だからといって放任していいわけでもない。
 小さな失敗の場合は、本人がその理由を自ら考えてその後の行動に生かすかを見守る必要がある。
 周囲に大きな迷惑を掛けるような大きな失敗に発展しそうな場合は、事前に食い止められるようにする必要がある。
 思わず手を出したくなる時もあるが、辛抱して思いとどまって、本人が反省材料にするのをサポートすべきである。
 「ほったらかし」は、自分の子供や部下がどこで何をしようが一切関知せず、自分に責任が降りかかってくれば、事が終わった後に何がどう悪かったのかを明らかにせず怒る。
 本人のためにはならないのは言うまでもない。
 「ほったらかし」も「干渉し過ぎない」も、本人に何も働きかけないという点では同じなので、第三者から見ると最初は見分けがつかない事も多いだろう。
 「ほったらかし」はネガティブで「干渉し過ぎない」はポジティブである。


「重労働」と「ハードトレーニング」の違い
 どちらとも体に同じ負荷がかかるとしても、その内容は大きく違う。
 「重労働」はお金を得るために、例え嫌できつい仕事であろうと無理にしなければならない。
 「ハードトレーニング」は、目標達成のために、自発的(能動的)に行う。
 「ハードトレーニング」は自分の意志でやり、いつでもやめられる。だからこそ長続きする。
 しかし、「世のため人のため」になる「重労働」を能動的に自分がやっている場合は、ネガティブではない。
 「重労働」はネガティブで「ハードトレーニング」はポジティブである。


「昔のやり方を変えない事」と「伝統を守る事」の違い
 技術の進歩などによって、社会のインフラは時代とともに変化する。
 外見的な変化はあっても、昔から受け継がれ改良されてきた考え方や信念を放棄しては何もならない。
 新しいインフラや技術が出てきても、その新しいものの中に伝統をどう反映させるかが問われる。
 相撲を例に取ると・・・
 録画による勝敗の判定。これは他のスポーツと比べても早い時期に導入している。
 昔は土俵の上にある屋根を支えるために柱があったが、これも屋根の重量を天井からのワイヤーで支えられるようになって、柱は取っ払われた。
 以前は力士は日本人ばかりであったが、外国人の力士を受け入れ、彼らの出身国のお国振りを彷彿させる四股名は漢字で見事に表現されている。
 いずれも、それらを導入することによって「昔のやり方」は変えたが、それで伝統が守れなくなったかというとそうではない。むしろ伝統を守るための正しい改善である。
 「昔のやり方を変えない事」はネガティブで「伝統を守る事」はポジティブである。


 以上列挙した行為は、それぞれ似ていることから、他人からみると誤解を受けることがあるかもしれない。
 しかし他人がどう思おうと、自分の信念がしっかりしていれば良い。重要なのは、動機・目的である。
 関連:「動機、目的が大事



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